• HOME
  • 脳卒中とは
  • 脳卒中について
  • 脳梗塞・脳出血について
  • 症状とリハビリについて
  • 病院や経過について
  • 高次脳機能障害・失語症

脳卒中について

脳の血管が急に破れたり、詰まることで脳の血管の循環に障害をきたし、さまざまな症状を起こします。

血管が詰まる脳梗塞、血管が破れる脳出血(クモ膜下出血を含む)に大別されます。

厚生労働省発表の「人口動態統計」によると、平成30年(2018年)1年間の死因別死亡総数のうち、脳血管疾患は10万8,165人でした。この数は全体の7.9%を占め、全死因の第4位という結果になりました。

「脳梗塞」が最も多く、6万362人。「脳出血」が3万3,040人、「クモ膜下出血」が1万1,990人、「その他脳血管疾患」が2,773人でした。

脳梗塞と脳出血の病態は異なりますが、双方ともに脳の細胞が損傷されて、症状が現れます。現れる症状は、「脳のどの部分に病変が生じたか」によって異なります。

原因

脳卒中は生活習慣病のひとつです。

原因として不規則な生活習慣・食生活、喫煙、多量飲酒、睡眠不足や運動不足が挙げられます。また、高血圧、心房細動、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病も脳卒中を引き起こす原因になります。

脳梗塞
脳卒中の約6割を占めています。脳の血管が詰まることにより十分に血液が運ばれず、神経細胞が障害されます。病態により「ラクナ梗塞」、「アテローム血栓性脳梗塞」、「心原性脳塞栓」に分かれます。
代表的な症状には、つぎのようなものがあります。

・急に手足から力がぬける。
・片側の手足が痺れる。
・片脚が引きずっている。ものにつまずく。ふらふらして真っ直ぐに歩けない。
・言葉が出てこない、理解できない。
・めまい、物が二重に見える。
・物の半分が見えない。

このうち、最も多い症状は「身体の右半身か左半身に力がはいりにくくなる」という「運動麻痺」です。つぎに多いのは呂律がまわりにくくなる「構音障害」、相手が話していることが理解できない・言いたいことが話せないといった「失語症」です。ほかにも身体の痺れなどの「感覚麻痺」、左側の空間の認識が難しくなる「半側空間無視」もみられます。こうした症状が1つだけ出現したり、いくつかの症状が重複して出現することもあります。

脳出血
脳の動脈が破れて出血し、流れた血液が血腫をつくり、脳内の神経細胞を圧迫することで障害が起こります。脳出血は脳卒中の約2割を占めており、時には死に至ります。
主な原因は高血圧です。脳の血管は細くてもろく、さらに血圧の負荷が強くかかります。長期間、血圧が高い状態が続くと血管はさらにもろくなり、血管が破れやすくなります。
症状は脳梗塞と大きくは変わらず、手足の力がはいりにくい、呂律がまわらない、手足が痺れる、めまいなどがみられます。出血した部位や出血した量により症状は異なります。
出血部位は、被殻が約4~5割、視床が約3割、他には皮質下、小脳、橋にみられます。

くも膜下出血
脳は外側から、硬膜、くも膜、軟膜で覆われています。くも膜と軟膜の間にはくも膜下腔と呼ばれるスペースがあります。くも膜下出血は、このくも膜下腔に出血が起こります。
原因としては、脳動脈の一部がふくらんだ動脈瘤の破裂によるものが多く、死亡率も他の脳卒中に比べ高く、後遺症を残す場合もあります。家系内に動脈瘤やくも膜下出血の方がいる場合は発生頻度が高く、高血圧、喫煙、過度の飲酒も発症の危険因子になります。
発症したときの症状としては、「頭を殴られたような激しい頭の痛み」、「意識がもうろうとする」、「嘔吐」、「物が二重にみえる」といったものが現れます。

運動の障害
脳梗塞や脳出血により脳の神経細胞が障害されます。障害されることで、随意的に(自分の意志で)手足などを動かしにくくなる状態を「運動麻痺」といいます。脳卒中では障害された脳の反対側の半身が動かせなくなることが多く、「片麻痺」と呼ばれています。
神経が障害されると、脳からの指令が伝達しにくくなります。そのため、その神経が支配している筋肉が動かしにくくなります。感覚障害や筋肉の緊張の異常(筋肉がつっぱる、硬くなるなど)が合併すると、手足の運動がさらに難しくなります。
関節を動かすのは筋肉なので、筋肉や手足を動かしていない状態が長くなると関節の動きが悪くなり、関節が硬くなってしまいます。関節が硬くなった状態を「関節拘縮」と呼び、関節の可動域が制限されます。

感覚の障害
人にはものを目でみる「視覚」、耳できく「聴覚」、匂いを嗅ぐ「嗅覚」、舌で味を味わう「味覚」のほかに、触ったものを感じる「触覚」「圧覚」「温度覚」、痛みを感じる「痛覚」があります。さらに、関節の動きや手足の位置を感じる「運動覚」「位置覚」も存在します。

皮膚で感じる「柔らかい」「痛い」「熱い」「冷たい」などの感覚は、神経を通って脳へ伝えられます。脳が障害されると情報がうまく脳に伝えられず、ものが触れている感触や痛みなどがわかりにくくなります。

リハビリについて
運動麻痺や感覚麻痺は、その程度や症状が1人ひとり異なります。
リハビリでは「どのぐらい関節や手足が動くか」、「筋肉の力はどの程度か」、「感覚はどれくらい感じられるか」などの身体機能を評価します。また、立ち上がりや歩行などの動作を確認し、正しい方法で動作の練習を反復します。
「ふらつかずに歩きたい」という希望をよく耳にします。骨折などの怪我では筋力を強くしたり、痛みを軽減することでふらつきが改善されることがあります。しかし、脳卒中の後遺症では筋力を強くしたり、ただ単に歩く練習をするだけではよくはなりにくいです。
例えられる練習としては、

・関節や筋肉を柔らかくし、動きやすい身体をつくる。
・手足を動かして筋肉を使い、「手足の動かし方」を覚える。
・動作を反復させて「正しい動作方法」を学習する。
・麻痺していない手足ばかりを使うのではなく、麻痺している手足も使った動作を獲得する。
・体重を上手に乗せる練習を繰り返し、身体を支える感覚を身につける。

などが挙げられます。正しい方法で動作を繰り返し練習し、筋肉の収縮(緊張)を自分でコントールできるようになることが大切です。

脳卒中の発症後
脳卒中を発症すると、病院の急性期病棟に1~2か月ほど入院することになります。その後、身体機能や動作能力をさらに改善するために回復期病棟に最大5~6か月入院することになります。

急性期病棟
医師の指示のもと、意識や血圧などの全身状態を管理しながらリハビリを実施します。ベッドでの寝たきりの時間をなるべく減らすため、座位や立ち上がり、車いすへの移乗などを練習します。

回復期病棟
全身状態が安定されている方も多く、積極的にリハビリを実施します。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士それぞれのリハビリを受け、機能回復につとめます。
また、医師、病棟の看護師、ソーシャルワーカーと退院後の生活について連携を図っていきます。自宅に帰る前には必要に応じて、家屋訪問をおこない、「どのように生活をしていくか」「自宅に帰るにはどのような動作が必要になるか」などを明確にします。

退院後の生活
退院後はご自宅に帰られる方、施設に入所される方などさまざまです。

〇介護保険
ケアマネージャーを通し、決められた介護度の点数内でサービスを提供します。
主に訪問リハビリやデイサービスを利用し、身体機能の回復・維持を目的にリハビリを実施します。

〇医療保険
病院での外来リハビリを受けられる方もおられます。

〇自費リハビリ
当センターのような脳卒中専門の自費リハビリサービスを利用し、後遺症の改善を目指すことができます。

回復の経過
脳卒中の発症後、「どのくらい回復するのか」、「どれぐらいの期間で歩けるようになるのか」といった不安をもたれた方も多いと思います。
脳卒中は発症した日からの経過や年齢により回復の程度が大きく変わります。
発症後、早期にリハビリを開始することが重要です。個人差はありますが、麻痺など身体機能は、発症から2~3か月の期間が最も回復するといわれています。発症から6か月以降では回復が停滞するとされていますが、全く回復しないということではありません。6か月以降もリハビリを継続することで後遺症を改善させることができます。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、言語・思考・記憶・行為・学習・注意などの知的な機能に障害がおこった状態のことです。原因として、脳血管障害、頭部外傷、感染症、中毒疾患などのさまざまな疾患から引き起こされます。脳血管障害が約8割を占め、次いで頭部外傷が約1割となっています。高次脳機能障害のなかでも最も多くあらわれるのは失語症で、次いで注意障害、記憶障害となっています。高次脳機能障害の特徴として①外見上は障害が目立たない ②本人自身も、障害を十分に認識できていないことがある ③障害は入院中よりも日常生活で出現しやすく、医療者に見落とされやすいです。

症状

言いたいこと・言われたことがわからない(失語症)

注意力や集中力の低下(注意障害)

比較的古い記憶は保たれているのに新しいことが覚えられない(記憶障害)

食事で皿の左半分を残したり、左側にある物体に気づかない(半側空間無視)

話す・聞くことはできるが、読み書きができない(失読失書)

衣服を正しく着たり脱いだりできない(着衣失行)

物事を段取りよく勧められなくなった(遂行機能障害)

など、日常生活に支障をきたすことが多くあり、症状は人それぞれ異なっています。

 

失語症

失語症とは、脳の損傷が原因で、読む・書く・話す・聞くなどの言語機能が失われた状態のことです。言われたことがわからない、言いたいことが伝えられない、という症状があります。構音障害(発音・抑揚・スピードなどが障害されること)や失声では、頭の中で言語の構成は可能なため、失語症には含まれません。

失語症にはさまざまな種類がありますが、代表的な失語症として、Broca(ブローカー)失語、Wernicke(ウェルニッケ)失語があります。

Broca(ブローカー)失語

運動性言語中枢の障害による失語症です。言語の理解はできますが、うまく話すことができません。

言いたいことを表す語を思い出せない、物品の呼称ができなくなったり、音韻性錯語といって音の一部を誤って発音する(「とけい」と「めけい」など)ことが多くみられます。

Wernicke(ウェルニッケ)失語

感覚性言語中枢の障害による失語症です。話し方は流暢ですが、言語や話を聞いて理解することが難しいです。

錯誤が多く、「とけい」を「とかい」と言い誤る字性錯誤、「めがね」を見て「とけい」と他の単語に言い誤る語性錯誤が多くみられます。