運動の障害
脳梗塞や脳出血により脳の神経細胞が障害されます。障害されることで、随意的に(自分の意志で)手足などを動かしにくくなる状態を「運動麻痺」といいます。脳卒中では障害された脳の反対側の半身が動かせなくなることが多く、「片麻痺」と呼ばれています。
神経が障害されると、脳からの指令が伝達しにくくなります。そのため、その神経が支配している筋肉が動かしにくくなります。感覚障害や筋肉の緊張の異常(筋肉がつっぱる、硬くなるなど)が合併すると、手足の運動がさらに難しくなります。
関節を動かすのは筋肉なので、筋肉や手足を動かしていない状態が長くなると関節の動きが悪くなり、関節が硬くなってしまいます。関節が硬くなった状態を「関節拘縮」と呼び、関節の可動域が制限されます。
感覚の障害
人にはものを目でみる「視覚」、耳できく「聴覚」、匂いを嗅ぐ「嗅覚」、舌で味を味わう「味覚」のほかに、触ったものを感じる「触覚」「圧覚」「温度覚」、痛みを感じる「痛覚」があります。さらに、関節の動きや手足の位置を感じる「運動覚」「位置覚」も存在します。
皮膚で感じる「柔らかい」「痛い」「熱い」「冷たい」などの感覚は、神経を通って脳へ伝えられます。脳が障害されると情報がうまく脳に伝えられず、ものが触れている感触や痛みなどがわかりにくくなります。
運動麻痺や感覚麻痺は、その程度や症状が1人ひとり異なります。
リハビリでは「どのぐらい関節や手足が動くか」、「筋肉の力はどの程度か」、「感覚はどれくらい感じられるか」などの身体機能を評価します。また、立ち上がりや歩行などの動作を確認し、正しい方法で動作の練習を反復します。
「ふらつかずに歩きたい」という希望をよく耳にします。骨折などの怪我では筋力を強くしたり、痛みを軽減することでふらつきが改善されることがあります。しかし、脳卒中の後遺症では筋力を強くしたり、ただ単に歩く練習をするだけではよくはなりにくいです。
例えられる練習としては、
・関節や筋肉を柔らかくし、動きやすい身体をつくる。
・動作を反復させて「正しい動作方法」を学習する。
・麻痺していない手足ばかりを使うのではなく、麻痺している手足も使った動作を獲得する。
・体重を上手に乗せる練習を繰り返し、身体を支える感覚を身につける。
などが挙げられます。正しい方法で動作を繰り返し練習し、筋肉の収縮(緊張)を自分でコントールできるようになることが大切です。